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zoom RSS 【夏休み特集】2011年の人工歌姫(3) 限りなくフラットなこの世界

<<   作成日時 : 2011/08/06 09:28   >>

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 夏休み特集第3回(完結)です。第1回と第2回は以下のリンクからどうぞ。

【夏休み特集】2011年の人工歌姫(1) ボーカルトレース技術概要
http://someiyoshino.at.webry.info/201108/article_2.html
【夏休み特集】2011年の人工歌姫(2) VOCALOIDの仕様限界
http://someiyoshino.at.webry.info/201108/article_4.html

 引き続き、以下に書いている考察・技術は全て土屋の想像であり、完全に間違っている可能性が十分にあります。フィクションとして読んでもらえると嬉しいです。

■人力VOCALOIDの可能性

 「人力VOCALOID」というのをご存じだろうか? VOCALOIDとは逆(?)の発想で、既存の生歌を切り貼りし、ピッチや音長を変更する事で、全く別の曲をまるでその人が歌っているように見せる動画である。未見の方は論より証拠で以下の二つの動画をご覧頂きたい。

【人力VOCALOID×宇多田ヒカル】「ココロ」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm13390409


【人力Vocaloid】ロボキッス【やよい・亜美】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm8729883


 「ココロ」の方はその出来の良さに宇多田ヒカル本人がtwitterで言及したというエピソードがある。「ロボキッス」に至っては聞こえてくる歌声が自然すぎて逆に不自然さを感じてしまう完成度だと思う(しかもこれ2009年の作品なのだ)。

 この二つの動画から共通して感じるのは「この(元曲を切り貼りしたコラージュである筈の)歌声には『感情』があるように感じる」という点だ。音と音の繋がり方は微妙かもしれないが、その感情のこもり方(「ココロ」なら切なさ、「ロボキッス」なら快活さ)は、VOCALOIDの歌声とは一線を画している。

 最新技術によって演算されたVOCALOIDの歌声には、感情が音声データベースの仕様上オミットされていて、手作業による切り貼りで作られた人力VOCALOIDのそれには、歌っている本人は(当然ながら)意識していない感情が生まれている。この逆転現象はとても興味深いと思う。

 現在のVOCALOIDのデータをボーカルトレースで極限までチューンしたとしても、このような感情は付与されないだろうと僕は想像する。ボカロの歌声に(演算によって)感情を付与するには、ボーカルトレースとは別の技術が必要なのだろう。そしてそれはまだ存在しない技術なのだ(だからアペンドを作る為に新規録音する必要があるのだ)。

■フラットなVOCALOIDボイスの可能性

 最後に、VOCALOIDボイス自体の可能性について。これは、僕がこんな所で書かなくても、沢山のボカロファンの存在が、その可能性を既に証明しているので、簡単に書く。

 VOCALOIDの歌声には感情が付与されていないと書いたが、それは言い換えれば、ボカロの歌声は感情が抑制されたフラットな物だという意味だ。そして、その声には独特の聞きやすさ、親しみやすさがある。だからこそ、作り手、聞き手共に、ボカロを中心としてこれだけ多くのファンが形成されたのだろう。

 それを最近思い知らされたのはこの動画だった。

【VOCALOIDミュージカル】Alice in Musicland【オリジナル曲】
http://www.nicovideo.jp/watch/sm15108950


 OSTER projectによるこのミュージカルは、ボカロが歌っている事に強い意味があって、誰かが生歌を当てると逆に楽しさを薄めてしまうのではないかと思う(比較対象が今の所無いから実際はわからんけど)。ついでに言えば、この歌声にボーカルトレースによるデータを付与するのも同じ理由で逆効果だろう。

 OSTER projectに限らず、ボカロで作曲をする人の多くは、ボカロの歌声の持つ特性を既に見抜いていて、その特性を最大限に活かせる楽曲作りをしているように僕には思える。それが良い事なのかどうかはちょっと僕には判断が出来ないけど、この先のボカロ界隈の進展が楽しみだという事は間違い無い。

■終わりに

 3回に分けて連載してきた夏休み特集「2011年の人工歌姫」はこれにて終了となる。本当は「ボカロタグの変遷の歴史」と「VOCALOID3(特にクリプトンが参入しない件について)」の話も書きたかったのだけど、本論から外れるので今回はオミットした。もしかしたら、補講として夏休み中に書くかもしれないけど、約束は出来ない。

 また、論旨の展開の都合上、人力VOCALOIDの動画を2本紹介したが、これらの動画は「コラージュされた『歌声』には著作権が無いのだろうか?」という別の問題をはらんでいる。これはこれで、数年後のボカロ的技術の進化を考えると考察のしがいがあるテーマだと個人的には思っている。

 さて、2011年のシャロン・アップル(※)は、その独特のフラットな(≒感情の抑制された≒機械的な)歌声が、逆に聞く人に親しみやすさを与え、爆発的な人気を呼んだ。だが、同じ形でのムーブメントを再び起こす事は難しいように思う。理由を上手く説明出来ないが、その方向にはもう伸びしろが無いのかなと僕には思えるのだ。

 しかし、人工歌姫達がその歌声に自由な感情表現を獲得した時、また新しい時代が切り開かれるのではないかとぼんやり期待している。だから僕は、この先、どんな形で次世代VOCALOID達がブレイクするのか、今からワクワクしている。

(終)

※シャロン・アップルを知らない人は傑作アニメ「マクロスプラス」を見よう。劇場版がDVDでリリースされてる筈。


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